母の個性と、灰色・黒・白の厳密な配置を同時に成立させた。
何が描かれているか
画家の母アンナ・マクニール・ホイッスラーが、黒いドレスと白い帽子で横向きに座る。手には白いハンカチを持ち、足元の小さな台へ靴を置く。姿勢はまっすぐで、視線は画面左へ向く。
灰色の壁にはホイッスラー自身の版画が一枚掛かり、左端の花柄のカーテンが垂れる。家具や小物を減らし、黒い身体、灰色の壁、白い布の大きな面を整然と並べている。
作品の見どころ
顔や手は静かに描き込む一方、ドレスは大きな黒い形としてまとめる。椅子の脚、額、床の線が水平と垂直をつくり、横向きの身体を画面全体の幾何学へ結びつける。
「母の肖像」という親密な主題と、「灰色と黒のアレンジメント」という抽象的な題名は矛盾しない。人物の存在感を残しながら、色、線、面の配置も同じ重さで見せている。
制作背景
オルセー美術館は1871年の油彩画として登録する。モデルのアンナは当時ロンドンで息子と暮らしていた。立つ予定だったモデルが来られず、母が座ってポーズを取ったという説明が伝わる。
作品は1883年にパリのサロンで展示され、1891年にフランス国家が購入した。今日の名声に対して受容はすぐには定まらず、家族肖像と実験的な色彩構成の両面が徐々に評価された。
作品情報
位置づけ
母アンナを描きながら、灰色・黒・白の配置を題名に掲げ、肖像と色の構成を重ねた。
出典・画像について
画像:James McNeill Whistler《灰色と黒のアレンジメント第1番―画家の母の肖像》/灰色と黒のアレンジメント第1番―画家の母の肖像 — James McNeill Whistler / Wikimedia Commons
Public Domain表示の画像です。扱いは国・地域によって異なります。
間違いを見つけたら、教えてください →アフィリエイトリンク|このリンクから購入されると、運営者に報酬が入ることがあります。
この画家について本で読む
ランドスケープとモダニティ トマス・ガーティンからウィンダム・ルイスへ
小野寺 玲子 編/大石 和欣ほか 著 / ありな書房
イギリス風景画と近代を考える論集。ホイッスラー初期のテムズ河風景を扱う章があり、港の絵からノクターンへ進む背景を深く読めます。
楽天ブックスで見る →