何が描かれているか
水辺に建物が連なり、手前には小さな人々が行き交っている。右側には船や桟橋のような形が見え、建物の窓や屋根は細かな線で描かれる。油絵のような色ではなく、線の密度で街が現れる。
建物のある上方には線が多い一方、手前には広く紙の色が残っている。人々も均等な大きさではなく、遠い姿は短い線の集まりに近い。すべてを同じ細かさで描いた街並みではない。
作品の見どころ
まず屋根の輪郭を左から右へたどり、それから手前の人へ目を移してみたい。小さな線だけでも歩く姿や集まりが見えてくる。建物の大きさと人の小ささを比べると、水辺の広がりがつかみやすい。
線が重なる濃い場所と、ほとんど描かれていない場所を比べたい。余白は、建物や人物を見つけるための間として感じられる。近づいても離れても見直したい一枚だ。
制作背景
所蔵館は制作年代を1879〜1880年、技法をエッチングとドライポイントとする。どちらも金属の版に線を作って紙へ刷る技法で、前者は腐食、後者は針で直接刻む方法を使う。
版画では版を作った年と、一枚の紙に刷った年が一致するとは限らない。この所蔵品には後年の蝶の署名も記録されているため、表示した年代は版の制作時期として読みたい。