何が描かれているか
暗い褐色の背景の前に、ホイッスラーが上半身を斜めに向けている。顔はこちらに近い方向を向き、髪や口ひげが見える。服は黒に近く、首元の白い襟と顔の明るさが画面の中で目立っている。
背景と服の境目は、はっきりした場所も、暗さの中へ溶け込むような場所もある。周囲の家具を詳しく示す肖像とは違い、顔の周辺に明るい色が集まっている。
作品の見どころ
最初は白い襟を手がかりに、顎、頬、目元へと目を動かしてみたい。顔のすべてが同じ明るさではなく、額や鼻の光と頬の影が混ざる。小さな明暗の違いから、顔の向きや厚みが見えてくる。
次に少し離れて、背景の褐色と服の暗い色を比べてみたい。題名には金と褐色が挙げられるが、金属の金が描かれているという意味で読む必要はない。画面全体の温かな色のまとまりに注目できる。
制作背景
ナショナル・ギャラリー・オブ・アートは1896〜1898年頃の油彩による自画像と記録する。画家は1903年に亡くなっており、これは晩年の姿を描いた作品に当たる。
『母の肖像』では椅子や壁も人物を支えるが、この自画像は背景の物が少ない。並べて眺めると、人物の周囲を描き込む方法と、暗い色の中から顔を浮かばせる方法の違いを確かめられる。