何が描かれているか
テムズ川沿いの酒場または宿の窓辺で、赤毛の女性と二人の男性がテーブルを囲む。女性は白い服の胸元を開き、右の男性へ身を寄せる。手前の男性は背を向け、窓外を見る。
窓の向こうには帆柱、索具、船体、倉庫、対岸の建物が密集する。室内の人物より港の細部が広く描かれ、窓枠は人のいる近景と働く川の遠景を一枚の画面に接続する。
作品の見どころ
女性の白、男性の黒、テーブルの赤褐色が近景の三角形をつくる。その背後では帆柱の縦線と索具の斜線が複雑に交差し、人間関係の張りつめた空気を港のざわめきへ広げる。
室内を安全な観察場所にせず、川の湿った光と船の仕事を人物のすぐ背後まで迫らせた。肖像、風俗場面、都市風景のどれか一つに収まらず、港で暮らす人と物流を同じ視野に置く。
制作背景
ナショナル・ギャラリー・オブ・アートは1860〜1864年の油彩画として登録する。ホイッスラーがロンドンへ定住し、テムズ川下流の埠頭や船を繰り返し観察した時期の作品である。
制作には数年を要し、人物や背景を変えながら完成した。場面を瞬間的に写したように見せつつ、窓枠、人物、船の位置を長く調整した構成として読む必要がある。
アフィリエイトリンク|このリンクから購入されると、運営者に報酬が入ることがあります。
この画家について本で読む
ランドスケープとモダニティ トマス・ガーティンからウィンダム・ルイスへ
小野寺 玲子 編/大石 和欣ほか 著 / ありな書房
イギリス風景画と近代を考える論集。ホイッスラー初期のテムズ河風景を扱う章があり、港の絵からノクターンへ進む背景を深く読めます。
楽天ブックスで見る →