何が描かれているか
北欧の夏の夜、女性が小舟をこいで岸へ向かっている。題名は《真夜中》だが、画面は暗闇に沈まない。空と水に残る淡い光が、長い夏の夜を伝える。女性は振り向かず、両手で櫂を動かす。その背中をたどると、舟の先と岸の間の短い距離が見えてくる。夜景でありながら、静止した風景ではない。
作品の見どころ
水面には緑や紫の影があり、舟の内側には明るい橙色が差す。岸の草は細かく描き込まれず、暗い帯となって水を囲む。女性の服や髪も一つの輪郭ではなく、光の当たる部分と影で形になる。水を描いた水彩画から油彩へ移った後も、画家は反射する光に関心を持ち続けた。櫂の動きと静かな水面の対比が心地よい。
制作背景
ソーン美術館は1891年作と記録し、画家自身が題材を「明るく冷たい北欧の夏の夜」と表現したと紹介する。絵は一度フランスのオペラ歌手ジャン=バティスト・フォールに売られ、後に妻エンマが買い戻した。現在はモーラの同館にある。夏の夜の空気を描いた、画家の故郷へのまなざしを知る一枚である。
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この画家について本で読む
Anders Zorn: A European Artist Seduces America
Oliver Tostmann 編 / Paul Holberton Publishing
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