何が描かれているか
キリストが建物の前に立ち、周囲の人々が手を伸ばし、顔を寄せて取り囲む。誰が標的になっているかは、人物の視線と手の方向ですぐに分かる。金地の小さな画面に、集団の圧力が詰め込まれている。
大きな身振りをする人々に対し、中央のキリストの姿は比較的静かである。声は描けないが、開いた口や突き出された腕から騒がしさが伝わる。
作品の見どころ
人物が重なっても、衣の色と顔の向きでそれぞれの位置を区別できる。建物は奥へ続く都市の再現ではなく、場面を支える舞台のように働く。狭い板の中で前後と左右を同時に見せる工夫である。
小型の板絵では、遠くから見る大壁画と違い、細部へ顔を近づけられる。手の指や目線を一つずつたどると、嘲笑という言葉だけでは分からない関係が見える。
制作背景
この作品は長く所在が知られず、2019年に発見され、のちにルーヴル美術館の収蔵品となった。ロンドンの聖母子、ニューヨークの鞭打ちと関連する板と考えられる。ただし失われた元の配置を完全に復元することはできない。
ルーヴルの公開資料はチマブーエの作品として紹介する。