何が描かれているか
十字架の中央でキリストは頭を右へ傾け、身体を大きく湾曲させる。腕は横へ伸びるが、腹と脚はまっすぐな柱の上に重く沈む。左右の端に聖母と福音書記者ヨハネを配した、礼拝のための大きな板絵である。
これは十字架を単なる記号として示す絵ではない。苦しみを受けた人の身体としてキリストを描き、見る人が傷や表情に近づけるようにする。
作品の見どころ
胸から腹へ続く明暗と、脚を通る長い線に注目したい。輪郭は細く整えられる一方、胴体が曲がることで、重さを受けた姿勢が生まれる。左右の小さな人物が視線を内側へ向け、中央の身体へ見る順番を導く。
十字架の形に合わせて人物を配置するため、横木や下端も画面の一部になる。額縁の中に独立した一場面を置く形式とは違い、教会の空間へ絵そのものが立つ。
制作背景
アレッツォのサン・ドメニコ聖堂にある作品で、チマブーエの初期に位置づけられる。制作年には幅があり、ここでは1260年代頃とする。図像を特定の一瞬の記録として読むより、礼拝者へ受難を示す像として見る必要がある。
後のサンタ・クローチェの十字架と比べると、同じ主題でも身体の曲げ方や顔の陰影が変わる。