何が描かれているか
大きな十字架の上で、キリストの身体は左へ傾き、閉じた目と下がる頭が死を示す。横木の端には悲しむ聖母とヨハネがいる。金色と赤の装飾が傷ついた身体を取り巻き、遠くからも強い輪郭が見える。
画面には色の抜けた広い部分が残る。これは最初から白く描いた効果ではなく、後の損傷を含む現在の姿である。
作品の見どころ
腕を左右へ伸ばす十字架の硬い形に対し、胴体は曲線をつくる。肋骨や腹の明暗が、平らな板の上に身体の起伏を与える。装飾的な模様と痛みのある肉体を切り離さず、同時に見せるところに特徴がある。
聖母とヨハネの小さな姿は、鑑賞者の代わりにキリストへ向かう。見る人の視線はまず大きな身体に止まり、それから周囲の人物と装飾へ移る。
制作背景
サンタ・クローチェの公式記録は、作品を1288年以前に制作されたと説明する。1966年のフィレンツェ大洪水で大きな被害を受け、彩色面の約六割が失われた。現在見える色の欠落は、この災害と修復の歴史を背負う。
保存の問題を含めて見ても、傾いた首と身体の重みは読み取れる。作品を完全なまま残った中世絵画として扱わず、何が残り、何が失われたかを意識すると、現在の十字架の意味もはっきりする。