何が描かれているか
細い柱に結ばれたキリストが中央に立ち、左右の人物が鞭を振り上げる。三人は狭い建物の前に置かれ、互いの腕と鞭の向きが中央へ集まる。受難の一場面を、少ない人物と明快な動作で読ませる。
キリストは激しく動かず、両側の人物の動きがかえってその静けさを強める。苦痛を誇張した顔ではなく、向かってくる手と鞭によって、今起きていることを示す。
作品の見どころ
背景の建物は柱や屋根で囲まれるが、現実の一室を正確に写したものではない。縦の柱と斜めの屋根が人物の位置を区切り、目を中央へ戻す。金地と建築の組み合わせが、物語の場所を最低限に伝える。
人物の衣の色を見比べると、中央の明るい身体と両側の濃い衣が際立つ。画面の左右は釣り合っているが、腕の高さや足の置き方は同じではない。
制作背景
フリック・コレクションは1280年頃の作品として紹介し、チマブーエへの帰属と、ロンドンの《二天使を伴う聖母子》との関係を説明する。小さな板絵の一部として作られたと考えられるが、元の全体像は残っていない。
画面の周りに別の場面が続いたと想像すると、ここだけで完結する大祭壇画とは違う読み方になる。