何が描かれているか
ピサ大聖堂の後陣に、福音書記者ヨハネが立って本を持つ姿がある。金色の背景と濃い衣の間に顔と手が浮かび、人物の輪郭は細かな石やガラスの粒で作られる。板絵と同じ聖人像でも、材料と見る距離が大きく異なる。
モザイクは小片を並べて形と色をつくる技法である。近くでは粒の集まり、離れると一つの人物になる。金色は均一な黄色の面ではなく、角度の違う小片が光を受けて変化する。
作品の見どころ
ヨハネの姿勢は静かだが、衣のひだと顔の向きが身体の位置を示す。視線を顔から衣の線へ動かすと、人物が単なる記号ではなく、考えながら立つ人として感じられる。大きな宗教空間に合わせ、輪郭も明快である。
後陣の大きなキリスト像と周囲の聖人像の中に置かれているため、一人のヨハネだけで完結しない。
制作背景
ピサの大聖堂を管理する機関は、後陣のヨハネ像をチマブーエが1302年頃に制作した部分として説明する。後陣全体を彼一人が作ったわけではない。複数の時期と作者が関わる大きな装飾の一部である。
同じ画家の板絵と見比べると、顔や衣の表現を別の材料へ移す難しさが見えてくる。