何が描かれているか
金地を背に、聖母が幼子キリストを膝に抱く。二人の天使が玉座の左右に立ち、中央の親子を囲む。幼子は聖母の顔へ近づき、聖母もわずかに頭を傾ける。小さな板絵だが、人物の距離が近く感じられる。
玉座は単なる平面の模様ではなく、脚と背もたれが奥行きを示す。天使の身体がその手前に重なり、人物を並べただけの画面から、同じ場所に集まる場面へ変えている。
作品の見どころ
聖母の濃い衣の縁に沿って金の線が走る。光を受けたように見える線は、生地の重さを細かく説明するためだけではない。暗い衣と明るい顔を結び、鑑賞者の視線を幼子の身振りへ導く役目も果たす。
左右の天使は鏡のように同一ではない。顔の向きや手の位置が少しずれ、中央に視線を集めながら画面へ動きを与える。
制作背景
ロンドンのナショナル・ギャラリーは1280〜1285年頃の作品として登録する。2000年に再発見されたこの板は、フリック・コレクションの《キリストの鞭打ち》などと同じ小さな連作に属した可能性がある。
一枚だけを眺めると静かな聖母子像だが、もとは別の場面とつながっていたかもしれない。