何が描かれているか
大きな目、開いた口、広げた翼をもつ、人とも鳥ともつかない存在が正面を向く。頭からは巻いた髪のような形が伸び、脚は短い線へ単純化される。
左右対称に近いが、翼、手、顔の線は少しずつ異なる。宗教画の荘厳な天使より、驚き、ためらい、動き出す直前が混ざる小さな生き物のように見える。
作品の見どころ
目と口の三つの開いた形が顔を作り、その周囲で翼と髪の線が広がる。少ない色と線でも、閉じる方向と開く方向が同時にあり、表情を一つへ決めにくい。
有名な「歴史の天使」という意味を先に当てはめず、まず線の動きと正面性を見るとよい。画面そのものは、過去や未来を具体的な物語として描いてはいない。
制作背景
1920年制作。思想家ヴァルター・ベンヤミンが1921年に購入し、後に論考で、過去の破局を見ながら未来へ運ばれる「歴史の天使」として解釈したことで広く知られた。
その解釈はクレー自身が作品へ添えた説明ではなく、ベンヤミンの思想に属する。現在はイスラエル博物館が所蔵する。作品と後世の受容を区別すると、この小さな絵が持つ影響の広がりが見える。