何が描かれているか
横に重なる色の帯の中で、単純化された鳥が頭を下へ向ける。そのそばに下向きの矢印が置かれ、題名を読まなくても落下の方向が伝わる。
鳥は羽毛まで写実的に描かれず、頭、翼、胴体が線と色の小さな記号へ変えられる。背景も空や地面をそのまま描かず、青、橙、褐色の層として構成される。
作品の見どころ
鳥の形と矢印を同じ方向へそろえることで、静止した紙面に運動を作る。矢印は説明記号だが、画面の線としても働き、見る順序を上から下へ決める。
色の帯は水平に安定しているのに、鳥だけが垂直に落ちる。この二つの方向の衝突を見ると、小さな作品でも落下の不安と速度が強く感じられる。
制作背景
1919年制作。メトロポリタン美術館の記録では、水彩、転写油彩、インクを紙に用い、さらに厚紙へ貼られている。絵画と素描の間を行き来するクレーの技法が分かる。
転写油彩は、油性の絵具を塗った紙を重ね、上から線をなぞって下の紙へ写す方法である。均一な印刷線ではない、かすれや汚れを含む線が、鳥の不安定な動きに合っている。