何が描かれているか
暗い色面が重なり、右を向く人の顔を思わせる形が見えます。目や口は線や色の区切りで示され、頭部には黒い十字が重ねられています。顔の細部を描き込む代わりに、複数の色面が頭部の輪郭を作っています。肖像のように感じられながら、取り消しの印を付けられた図形にも見えます。
作品の見どころ
題名を知ってから黒い線を見ると、顔の一部を消したり、画面を分断したりする印のように感じられます。「亡命の芸術」の解説は、この顔を自画像と解釈できるとしています。ただし、クレー本人の容貌を正確に写した肖像とは断定していません。線が顔を横切ると同時に、色の区画を作っている点にも注目すると、政治的な意味と造形上の働きを合わせて見ることができます。
制作背景
1933年、ナチス政権下でクレーはデュッセルドルフ美術アカデミーの職を失い、年末に妻とスイスへ移りました。公式解説は黒い十字を、この解職とドイツの芸術家のリストからの排除に結びつけています。作品の題名と当時の出来事を併せて読むと、クレーの抽象的な形が、現実の社会から離れた表現だけではないことが分かります。