色・形・素材・意味の問いから読む · 20世紀

20世紀美術

色・形・素材・意味の問いから読む

「20世紀美術」と「キュビスム」は同じ大きさの名前でしょうか?

20世紀美術は、一つの描き方の名前ではありません。色を現実から離す、形の関係を探る、道具を選ぶ、写真や言葉を組み合わせる。異なる問いが重なり、同じ時期にいくつもの方法が続きます。

ヨーロッパとアメリカを中心に、具体的な作品と所蔵館の解説で読む入口です。世界全体の美術や、すべての運動を網羅する年表ではありません。初期の掲載可能な作品を図版で示し、戦後作品は本文と所蔵館の情報から読めます。

目次

20世紀美術――順番に置き換わる、一列の様式ではない

「20世紀美術」と「キュビスム」は同じ大きさの名前でしょうか?

フォーヴィスム、表現主義、キュビスム、抽象美術、ダダ、シュルレアリスムは、20世紀の前半に展開した異なる方法や運動です。戦後の抽象表現主義、ポップ・アート、ミニマル・アート、コンセプチュアル・アートも、それぞれ別の問いを持ちます。20世紀美術は、それらを含む年代の大きな入口です。

年代が前後しても、新しい方法が前の方法を全部なくすわけではありません。何を描くかに加え、何を作品にするか、どこでどう見るかを比べると、抽象が最後の到達点という一列の説明から離れられます。この章の節は、そのための比較の入口です。

絵を見る手がかり色、形、素材、展示、意味という五つの問いを、章を通して比べます。

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The Metropolitan Museum of Art / Fauvism ↗
確認箇所:本文:1905年Collioure、Salonと名称、定まった綱領のない集まり

The Museum of Modern Art / Street, Dresden ↗
確認箇所:作品情報・解説:1908年、1919年改作、1905年Brücke、街路と群衆

The Metropolitan Museum of Art / Abstract Expressionism ↗
確認箇所:本文:1940年代New York、非統一的な集団、1947年以降Pollockの床置き、Rothko・Newman・Still、具象も残る

The Museum of Modern Art / Campbell’s Soup Cans ↗
確認箇所:作品情報・解説:1962年、32点、手描きと型押し、棚での展示。シルクスクリーンとはしない

The Museum of Modern Art / Primarily Structural: Minimalist and Post-Minimalist Works on Paper ↗
確認箇所:展覧会名と会期(1999年2月7日〜4月3日、MoMA PS1)、本文のLeWitt・Martin・Flavinの紙作品と反復・構造の説明

The Museum of Modern Art / One and Three Chairs ↗
確認箇所:作品情報・MoMA Learning:1965年、椅子・写真・辞書の定義、選択と意味の問い

The Museum of Modern Art / Bicycle Wheel ↗
確認箇所:作品情報・解説:1951年の第三版、失われた1913年の原作、既製品、Dadaと第一次大戦

The Museum of Modern Art / Untitled (Perfect Lovers) ↗
確認箇所:1991年、壁時計と壁の塗装、同期・ずれ・停止・再設定、パートナーのAIDS診断との関係

The Metropolitan Museum of Art / Cubism ↗
確認箇所:本文:1907〜1914年の協働、面・視点、分析的/総合的キュビスム、他の画家への広がり

フォーヴィスム――色を、自然の色から解放する

壁や顔の色が現実と違っても、絵の関係は作れるでしょうか?

色の違う壁と窓枠の間に、舟のある港を短い筆跡で描くマティスの作品。
開いた窓、コリウールアンリ・マティス · 1905年ナショナル・ギャラリー(ワシントン)作品の解説を読む →

マティスとドランは1905年の夏、南フランスのコリウールで制作しました。同年の秋のサロンで、強い色の作品に向けられた批評の言葉から、フォーヴィスムという呼び名が広まりました。Metは、固定した綱領や会員制度を持つ運動ではなかったと説明しています。

《コリウールの開いた窓》は1905年の作品です。NGAの解説は、室内に広がる色の面と、窓の外の港に刻まれた小さな筆跡の違いを示します。同じ一枚でも、場所により絵具の置き方が変わります。

壁の緑や赤紫は、影を灰色にする約束から離れています。それでも、窓を囲う形と、外へ開く眺めが読めます。「強い色」という印象の次に、どの色が接し、どこで大小の筆跡が変わるかを見ると、色が画面を組み立てる働きに気づけます。

絵を見る手がかり左右の壁、窓枠、港の舟で、広い色面と短い筆跡を比べます。

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The Metropolitan Museum of Art / Fauvism ↗
確認箇所:本文:1905年Collioure、Salonと名称、定まった綱領のない集まり

National Gallery of Art / Open Window, Collioure ↗
確認箇所:作品情報・Audio:1905年、室内の色面と港の短い筆跡

画像:Henri Matisse《開いた窓、コリウール》/開いた窓、コリウール — Henri Matisse / Wikimedia Commons
画像の出典 / Public Domain Mark(画像情報:2026-09-14 確認)
Public Domain表示の忠実な複製画像です。扱いは国・地域によって異なります。

《赤いアトリエ》――奥行きと、平らな色面が共存する

赤で覆うと、部屋は平らになるだけでしょうか?

広い赤い面に、家具の輪郭と絵画、彫刻、陶器が配置されたアトリエ。
赤いアトリエアンリ・マティス · 1911年秋ニューヨーク近代美術館作品の解説を読む →

《赤いアトリエ》は1911年の秋、マティスのイシーのアトリエをもとに制作されました。MoMAは、画家自身の絵画、彫刻、陶器が配置され、広い赤い面と残された輪郭が、通常の室内とは異なる空間を作ると説明しています。

部屋の物の多くは輪郭で示され、画中の作品には色が残っています。どの部分が赤へ溶け、どの部分が別の像として目立つかを比べます。遠近法の線を一切なくした絵と決めず、床や壁の方向を読む手掛かりと、一続きの赤い面を交互に見られます。

制作する場所そのものが、作品を見せる画面になっています。室内を正確に測った図ではなく、画家の仕事をどう並べるかという構成として読むと、単に色が派手という説明から一歩進めます。時計の針がないことから、画家の心の状態まで断定することはできません。

絵を見る手がかり絵画、彫刻、椅子、時計の輪郭と、赤い面の境界を見ます。

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The Museum of Modern Art / The Red Studio ↗
確認箇所:1911年の作品情報・Gallery label:Issyのアトリエ、絵画・彫刻・陶器、赤い面と輪郭

画像:アンリ・マティス《赤いアトリエ》/Henri Matisse / Wikimedia Commons(平面作品の複製)
Commons個別ファイルのPublic domain表示に基づく忠実な平面複製。 米国での原作品の公表条件は別途確認が必要です。 国・地域によって扱いが異なります。

表現主義――街や身体を、見る経験へ変える

人物の形が歪むことと、作者の感情を知ることは同じでしょうか?

桃色の街路に帽子をかぶった人々が密集し、顔や服に緑・青・赤の強い色が使われている。
ドレスデンの街路エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー · 1908年(1919年改作)ニューヨーク近代美術館(MoMA)所蔵館の作品解説を読む ↗

キルヒナーは1905年にドレスデンで結成された「ブリュッケ」の共同創設者です。MoMAの《ドレスデンの街路》は1908年に制作され、1919年に改作されました。画面に書かれた1907という年と、所蔵館が整理する制作年は異なります。

MoMAは、群衆の中で互いに切り離されたような人物、強い色、顔の描き方を、近代都市の経験と結びつけて解説しています。作品が受けた後年の改作も、現在見える像の一部です。

表現主義を「怒りを描く」とだけ覚えると、画面の違いを見落とします。色の対立、鋭い輪郭、人物の近さと視線が、見る人にどんな距離感を与えるかを比べます。画家の心理の診断と、作品が作る視覚的な経験は分けて考えます。

絵を見る手がかり図版の顔、色、人物間の距離を確かめます。制作年と、画面に記された年は所蔵館の作品情報で区別します。

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The Museum of Modern Art / Street, Dresden ↗
確認箇所:作品情報・解説:1908年、1919年改作、1905年Brücke、街路と群衆

The Museum of Modern Art / Street, Dresden ↗
確認箇所:作品名 / 作者 / 制作年 / 所蔵・コレクション

Wikimedia Commons / Street, Dresden — file description ↗
確認箇所:Summary / Licensing / File history

画像:エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー《ドレスデンの街路》/エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー, Street, Dresden / Wikimedia Commons
画像の出典 / Public Domain / PD-Art(画像情報:2026-10-06 確認)
Commons配布の忠実な二次元複製を加工せず掲載。国や地域によって利用条件が異なる場合があります。

キュビスム――物の見え方と、画面の材料を問い直す

抽象へ進む途中の、一段階なのでしょうか?

キュビスムには、物の形を細かな面に分けるだけでなく、文字や貼り紙、強い色を使う方法もあります。詳しい別章へ進み、似た主題でも何を手掛かりとして残すかを読みます。対象がわかりにくくなることだけを、作品の新しさの尺度にしません。

カンディンスキーの色の関係、マティスの室内、モンドリアンの区切りと並べると、絵の平面を使う方法が一つでないことがわかります。キュビスムを20世紀全体の名前にせず、その中の具体的な問いとして読むと、他の方法の違いも残ります。

絵を見る手がかり詳しいキュビスムの章で、瓶や楽器の目印、面、貼り紙、色を比べます。

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The Museum of Modern Art / Suprematist Composition: White on White ↗
確認箇所:作品情報・Gallery labels:1918年、白い面と四角、筆跡、Suprematism

The Museum of Modern Art / Bicycle Wheel ↗
確認箇所:作品情報・解説:1951年の第三版、失われた1913年の原作、既製品、Dadaと第一次大戦

The Museum of Modern Art / The Red Studio ↗
確認箇所:1911年の作品情報・Gallery label:Issyのアトリエ、絵画・彫刻・陶器、赤い面と輪郭

Lenbachhaus / Farbstudie – Quadrate mit konzentrischen Ringen ↗
確認箇所:Details:1913年、水彩・グワッシュ・チョーク、紙の作品、CC0

The Museum of Modern Art / Broadway Boogie Woogie ↗
確認箇所:作品情報・Gallery label:1942–43年、黄色い線と小さな色面、街と音楽。渡米年の記述が内部で異なるため具体年は採用しない

The Metropolitan Museum of Art / Cubism ↗
確認箇所:本文:1907〜1914年の協働、面・視点、分析的/総合的キュビスム、他の画家への広がり

The Metropolitan Museum of Art / The Bottle ↗
確認箇所:作品解説、spring–summer 1914、Mediumの新聞・壁紙・切り紙の列挙。転載不可の画像は取得しない

The Metropolitan Museum of Art / Fernand Léger (1881–1955) ↗
確認箇所:本文:1910年サロン、1911年アンデパンダン展とSalon Cubists、より色彩的で読みやすい別の展開

抽象美術――色と形の関係も、見る対象になる

題材を特定できなければ、何も描かれていないのでしょうか?

大きな黒い形の周囲に黄色や赤、青が広がる、演奏会に関係する作品。
印象 III(コンサート)ワシリー・カンディンスキー · 1911年レンバッハハウス美術館作品の解説を読む →
四角ごとに異なる色を重ねた同心円が並ぶ、紙の色彩習作。
色彩習作―同心円のある正方形ワシリー・カンディンスキー · 1913年レンバッハハウス美術館作品の解説を読む →

《印象III(コンサート)》は、カンディンスキーが1911年1月2日に聴いたシェーンベルクの演奏会と関係する作品です。レンバッハハウスは、演奏体験を、音楽と色・形への関心をつなぐ出来事として説明しています。楽譜をそのまま絵へ置き換えた図ではありません。

《同心円のある正方形》は1913年の色彩の習作で、水彩、グワッシュ、チョークを使った紙の作品です。油彩の大画面とは、素材も大きさも異なります。題名と素材の情報を確認してから、色の配置を見ます。

隣り合う色が違うと、同じ輪でも明るさや広がりの感じが変わります。どの色が前へ出て見えるか、中心と外側の差がどこで強いかを比べられます。抽象画を作者の秘密の感情の暗号と決めず、今見える色と形の関係を言葉にしてみます。

絵を見る手がかり黒い大きな形と周囲の色、四角の中に重なる輪の配色を見ます。

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Lenbachhaus / Impression III (Concert) ↗
確認箇所:Werktext:1911年1月2日Schoenbergの演奏会、音楽と色・形への関心。十二音技法という本文表現は年代が合わないため採用しない

Lenbachhaus / Farbstudie – Quadrate mit konzentrischen Ringen ↗
確認箇所:Details:1913年、水彩・グワッシュ・チョーク、紙の作品、CC0

画像:ワシリー・カンディンスキー《印象 III(コンサート)》/レンバッハハウス美術館
画像の出典 / CC0 1.0 / 画像の出典・条件(画像情報:2026-09-28 確認)
公式配布画像のCC0表示に基づく。
画像:ワシリー・カンディンスキー《色彩習作―同心円のある正方形》/レンバッハハウス美術館
画像の出典 / CC0 1.0 / 画像の出典・条件(画像情報:2026-09-28 確認)
公式配布画像のCC0表示に基づく。

シュプレマティスム――少ない形でも、絵具の物質は残る

白い四角だけなら、誰が作っても同じでしょうか?

白い正方形の画面に、わずかに色の異なる白い四角が傾いて重なり、薄い筆跡と輪郭が見える。
白の上の白カジミール・マレーヴィチ · 1918年ニューヨーク近代美術館(MoMA)所蔵館の作品解説を読む ↗

マレーヴィチの《白の上の白》は1918年の作品です。MoMAは、わずかに異なる白の上に四角を置き、傾きと中心を外す配置、筆跡によって、空間や動きの感じが生まれると説明しています。シュプレマティスムは、外の物を再現することから離れた抽象の方法です。

幾何学的な形でも、完全に均一な印刷面とは限りません。輪郭の揺れと、絵具の厚さを確かめると、少ない要素を選んだことと、人の手がなくなったことを区別できます。抽象の方法を、色が多いか少ないかだけで分類しないための比較になります。

絵を見る手がかり図版で二つの白、四角の傾きと位置、輪郭、絵具の表面を確認します。画像を大きく開くと細部を見比べられます。

この節の出典・画像の利用条件

The Museum of Modern Art / Suprematist Composition: White on White ↗
確認箇所:作品情報・Gallery labels:1918年、白い面と四角、筆跡、Suprematism

The Museum of Modern Art / Suprematist Composition: White on White ↗
確認箇所:作品名 / 作者 / 制作年 / 所蔵・コレクション

Wikimedia Commons / Suprematist Composition: White on White — file description ↗
確認箇所:Summary / Licensing / File history

画像:カジミール・マレーヴィチ《白の上の白》/カジミール・マレーヴィチ, Suprematist Composition: White on White / Wikimedia Commons
画像の出典 / Public Domain / PD-Art(画像情報:2026-10-06 確認)
Commons配布の忠実な二次元複製を加工せず掲載。国や地域によって利用条件が異なる場合があります。

クレーとバウハウス――絵、素材、暮らしをつなぐ

抽象的な形の研究は、絵画の中だけの仕事でしょうか?

細い線の鳥のような形が棒と回転する柄につながり、背景に淡い色がある。
さえずる機械パウル・クレー · 1922年ニューヨーク近代美術館紙の作品。油性の転写による線、水彩、インクを使い、支持体の縁も保って掲載しています。作品の解説を読む →

クレーの《さえずり機械》は1922年の作品です。MoMAは、油性の転写による線、水彩、インクを使い、鳥と機械のような構造を組み合わせた紙の作品として記録しています。生き物らしさと道具らしさが同じ線の中にあります。

バウハウスは1919年、グロピウスがワイマールに創設した学校です。基礎課程で素材、色、形の関係を学び、金属、家具、織物、印刷などの工房へ進みました。クレーやカンディンスキーも教育に関わり、造形の研究を生活の道具や建築へつなげました。

Metは、織物の工房の商業的な役割と、女性が他の分野へ進むことを制限された状況も説明しています。学校は1933年に閉鎖され、その後アメリカで教えた人々もいました。理想だけでなく、誰が何を学べたかという制度の条件も確認できます。

鳥と機械の組合せを、作者が産業すべてを否定した証拠とはしません。細い線の動きと、回す道具の仕組みを見比べ、自然と人工の関係をどう感じるか考えます。学校の合理的な設計と、一枚の想像的な絵も、同時に存在できる仕事です。

絵を見る手がかり鳥のような線、棒、回すための柄、背景の色と紙の境界を見ます。

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The Museum of Modern Art / Twittering Machine ↗
確認箇所:1922年、油性転写・水彩・インク、鳥と機械の組合せ

The Metropolitan Museum of Art / The Bauhaus, 1919–1933 ↗
確認箇所:本文:1919年Weimar、色と素材の基礎課程、工房、女性の分野制限、1933年閉鎖、米国での教育

画像:Paul Klee《さえずる機械》/さえずる機械 — Paul Klee / Wikimedia Commons
画像の出典 / Public Domain Mark(画像情報:2026-09-14 確認)
Public Domain表示の忠実な複製画像です。扱いは国・地域によって異なります。

ダダとレディメイド――作るだけでなく、選ぶこと

市販の物を選ぶ行為も、作品の一部でしょうか?

印刷された文字や数字、赤・白・灰色・黄土色の紙片を重ねたコラージュ。署名や題名のある台紙全体も見える。
小さな踊りクルト・シュヴィッタース · 1920年クリーブランド美術館(1963.1)日常の紙片を貼ったコラージュ。台紙と文字を含めた全体を掲載しています。デュシャンのレディメイドとは方法が異なります。所蔵館の作品解説を読む ↗

絵を見る手がかり紙に印刷された文字や数字、赤い紙片、重なった縁を探してみます。次に《自転車の車輪》を開き、紙を貼る仕事と、既製の物を組み合わせる仕事の違いを比べてください。上の作品はコラージュです。

デュシャンの《自転車の車輪》は、車輪と椅子を組み合わせた作品です。MoMAが所蔵するのは1951年の第三版で、失われた1913年の原作そのものではありません。後の再制作を見る場合、最初の構想の年と、目の前の物が作られた年を分けます。

MoMAは、第一次世界大戦に応答するダダの活動と、既製品を選び美術として提示するレディメイドを説明しています。通常の用途から物を離すと、何を作品と認めるかという問いが生まれます。ダダとレディメイドは同じ語ではなく、後者は物を使う方法の名前です。

技巧を全部なくしたと考えるより、選択、組合せ、展示、題名のどこに仕事が移ったかを見ます。古い作品の複製や別版にも、制作と展示の履歴があります。画面の似方だけでなく、その物がどう成立したかを読む必要がある例です。

シュヴィッタースの《小さな踊り》は、1920年のコラージュです。クリーブランド美術館は、日常の紙片を組み合わせ、その色や素材の相互作用を示す作品として説明しています。

この節の出典・画像の利用条件

The Museum of Modern Art / Bicycle Wheel ↗
確認箇所:作品情報・解説:1951年の第三版、失われた1913年の原作、既製品、Dadaと第一次大戦

Cleveland Museum of Art / Little Dance ↗
確認箇所:作品情報:Kurt Schwitters、1920、Collage、1963.1。Description:日常の紙片と色・素材の相互作用。公式API share_license_status=CC0

画像:クルト・シュヴィッタース《小さな踊り》/Kurt Schwitters, Little Dance, 1920 / Contemporary Collection of The Cleveland Museum of Art, 1963.1 / CC0
画像の出典 / CC0 1.0(画像情報:2026-10-06 確認)
所蔵館がCC0で公開する全景画像。台紙と文字も保持しています。

シュルレアリスム――意識の制御から離れる、異なる方法

夢のような絵は、全部同じ技法でしょうか?

灰色の奥行きある空間に、正体の分からない丸い形や細長い形と影が広がる絵画。右下の署名と年記、画面四辺を保持。
ママ、パパがけがをした!イヴ・タンギー · 1927年ニューヨーク近代美術館(78.1936)1927年の油彩画。影や奥行きのある空間と、名前を決めにくい形の組合せを見ます。日本語題名は原題の訳です。所蔵館の作品解説を読む ↗

絵を見る手がかり影がどちらへ伸びるか、奥へ遠ざかる場所はどこかを見てみます。その一方で、描かれた形を身近な物の名前で呼べるか考えてください。精密に描かれた空間と、何か分からない形の組合せに注目します。

シュルレアリスムは、ブルトンによる1924年の宣言と結びつく運動です。Metは、意識の制御を弱める自動的な制作と、マグリットやダリの精密な描写を使う方法を、同じ運動の異なる実践として説明しています。

マッソンの自動素描やミロの有機的な形は、線や形を動かす過程から像を探します。一方、日常の物を明確に描きながら、あり得ない組合せや場所へ置く方法もあります。奇妙な題材があるかだけでは、制作方法の違いはわかりません。

絵を作者が見た夢の正確な記録と決めることはできません。何が普通に見え、どの関係だけが成立しないかを確かめると、不思議さを作る仕組みが読めます。自由な線と、精密な像の置き方を別々に見ると、一つの様式名の中の幅が見えてきます。

タンギーの《ママ、パパがけがをした!》は、1927年の油彩画です。

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The Metropolitan Museum of Art / Surrealism ↗
確認箇所:本文:Bretonと1924年の宣言、automatism、Masson・Miró、Magritte・Dalíの異なる方法

The Museum of Modern Art / Mama, Papa Is Wounded! ↗
確認箇所:作品情報:Yves Tanguy、1927、Oil on canvas、78.1936。画像転載条件はCommons個別ファイルから別判定し、MoMAの画像許可としない

Wikimedia Commons / Mama, Papa is Wounded! — file description ↗
確認箇所:Summary / Licensing:PD-Art、PD-old-auto-expired(1955年没)、米国1931年より前の公表。忠実複製の法域差とMoMAの権利表示を記録

画像:イヴ・タンギー《ママ、パパがけがをした!》/Yves Tanguy, Mama, Papa Is Wounded!, 1927 / The Museum of Modern Art, 78.1936 / faithful reproduction via Wikimedia Commons
画像の出典 / Public Domain Mark 1.0(画像情報:2026-10-06 確認)
CommonsのPublic Domain表示による全景複製。MoMAにはEstate/ARSの権利表示があり、忠実複製の扱いは地域により異なる場合があります。

モンドリアン――規則の中に、街と音楽のリズムを作る

縦横の線を使うと、動きはなくなるでしょうか?

白い面を縦横の黄色い帯が区切り、その途中に赤、青、灰色の小さな面が並ぶ。
ブロードウェイ・ブギウギピート・モンドリアン · 1942〜1943年ニューヨーク近代美術館(MoMA)作品の解説を読む →

《ブロードウェイ・ブギウギ》はニューヨークで制作された1942〜1943年の作品です。MoMAは、黒い線の代わりに黄色い帯と小さな色の区切りを使い、都市の街路やブギウギの音楽を思わせるリズムが作られると説明しています。

同じ幅の縦横でも、色の区切りは等間隔ではありません。線がつながる場所と、小さな色が止める場所を目で追うと、規則と変化が同時に働きます。ニューヨークの正確な地図や、音楽の拍子の図としてではなく、配置が生む視線の動きとして比べられます。

戦争の時期の移動と、新しい街での制作も、作品の条件に含まれます。抽象的な形だから社会と無関係というわけではありません。ただし、絵の形だけから政治的な立場を断定せず、生活の記録と、作品についての所蔵館の説明を合わせます。

絵を見る手がかり黄色い線の途中の、小さな赤・青・灰色の区切りをたどります。

この節の出典・画像の利用条件

The Museum of Modern Art / Broadway Boogie Woogie ↗
確認箇所:作品情報・Gallery label:1942–43年、黄色い線と小さな色面、街と音楽。渡米年の記述が内部で異なるため具体年は採用しない

The Metropolitan Museum of Art / The Bauhaus, 1919–1933 ↗
確認箇所:本文:1919年Weimar、色と素材の基礎課程、工房、女性の分野制限、1933年閉鎖、米国での教育

画像:ピート・モンドリアン《ブロードウェイ・ブギウギ》/Commons掲載の忠実な複製(撮影者の記載なし)
画像の出典 / Public Domain(地域条件あり) / 画像の出典・条件(画像情報:2026-09-28 確認)
Commonsの個別Public domain表示に基づく画像。

抽象表現主義――大きな画面と、身体の距離

筆を動かす絵だけが、抽象表現主義でしょうか?

絵を見る手がかり二つの絵を開き、ポロックでは線の重なり、ロスコでは色の境界をたどってみます。作品情報の寸法も見て、近づくときと離れるときで、どこへ視線が向かいそうか考えてください。

抽象表現主義は1940年代のニューヨークを中心に展開しましたが、固定した綱領で統一された集団ではありません。Metは、ポロックらの身振りを感じる画面と、ロスコ、ニューマン、スティルらの広い色の場を使う画面を区別して説明しています。

ポロックは1947年以降、床に置いた画布へ絵具を滴らせ、注ぐ方法を展開しました。同じ時期の絵画には、デ・クーニングのように人物像を含む仕事もありました。戦後の絵画がすべて無対象の画面へ置き換わったわけではありません。

小さな画像だけでは、大きな画面と見る人の距離は伝わりにくくなります。線の重なり、色の境界、作品の寸法を合わせて読むと、勢いだけでなく、近づく場合と離れる場合の違いを考えられます。戦後美術の中心の一つを、世界全体の唯一の進歩の基準にはしません。

この節の出典・画像の利用条件

The Metropolitan Museum of Art / Abstract Expressionism ↗
確認箇所:本文:1940年代New York、非統一的な集団、1947年以降Pollockの床置き、Rothko・Newman・Still、具象も残る

The Metropolitan Museum of Art / Autumn Rhythm (Number 30) ↗
確認箇所:作品情報:Jackson Pollock、1950、57.92;Artwork Details / Overview。画像はcopyright restrictedのため取得しない

The Metropolitan Museum of Art / No. 13 (White, Red on Yellow) ↗
確認箇所:作品情報:Mark Rothko、1958、2001.453。No.16等の別作品と区別。画像転載の許可は未確認のため取得しない

ポップ・アート――日常に繰り返す像を、美術の中へ

同じ缶を並べれば、工業印刷と同じでしょうか?

絵を見る手がかり缶を二つ選び、共通する輪郭と、文字やスープの種類の違いを見つけてみます。画面を一枚ずつ見る場合と、32枚の並びで見る場合に、何が目立つか比べてください。

ウォーホルの《キャンベル・スープ缶》は1962年の32枚の画布からなる作品です。MoMAは、手で描く部分と型押しの部分があり、最初の展示では、食料品店を思わせる棚へ並べられたと説明しています。この作品をシルクスクリーンで刷ったものとは扱いません。

よく似た像が続くと、同じ点と、缶の種類や細部の違いが同時に目立ちます。日常の商品を絵にするだけでなく、反復と展示によって、見る習慣を変える方法として読めます。消費への賛美か批判かを先に一つへ決めず、像の選択と並べ方から考えます。

この節の出典・画像の利用条件

The Museum of Modern Art / Campbell’s Soup Cans ↗
確認箇所:作品情報・解説:1962年、32点、手描きと型押し、棚での展示。シルクスクリーンとはしない

ミニマルとコンセプチュアル――形の反復と、意味の条件

要素が少ない作品は、考えることも少ないのでしょうか?

絵を見る手がかりマーティンの絵では一本の線を目で追い、規則的な格子と手描きの小さな揺れを比べます。コスースの作品では、椅子・写真・辞書の定義のそれぞれが、どんな情報を伝えるか考えてください。後者は絵画ではなく、物・写真・言葉を組み合わせた作品です。

MoMA PS1の1999年の展覧会解説では、ルウィットによる立方体と空間の区分の探究が紹介されています。マーティンの格子の素描も挙げられています。フレイヴィンの作品については、方眼紙を構造的な面として使う点が説明されています。これらは反復や規則を使う造形を読む手がかりです。ミニマル・アートを、単に小さい作品という意味では使いません。

コスースの《一つと三つの椅子》は1965年の作品で、折り畳み椅子、その写真、辞書の「椅子」の定義を並べます。MoMAは、画家が椅子を作るのでなく、物、像、言葉を選び組み合わせ、意味を問うコンセプチュアル・アートの例として説明しています。

形を減らすことと、意味の仕組みを問うことは同じではありません。前者では、数、間隔、配置を見ることができ、後者では、物と写真と言葉の違いを考えられます。どちらも「上手に描いたか」という一つの評価だけでは、作品の仕事を読み切れません。

マーティンの《樹(The Tree)》は、1964年の油彩と鉛筆による絵画です。MoMAは、規則的な格子と手描きの線の揺れの間にある違いを説明しています。

この節の出典・画像の利用条件

The Museum of Modern Art / Primarily Structural: Minimalist and Post-Minimalist Works on Paper ↗
確認箇所:展覧会名と会期(1999年2月7日〜4月3日、MoMA PS1)、本文のLeWitt・Martin・Flavinの紙作品と反復・構造の説明

The Museum of Modern Art / One and Three Chairs ↗
確認箇所:作品情報・MoMA Learning:1965年、椅子・写真・辞書の定義、選択と意味の問い

The Museum of Modern Art / The Tree ↗
確認箇所:作品情報:Agnes Martin、1964、Oil and pencil on canvas、5.1965;2019 Gallery label:regularityとwaveringの説明。転載の許可は未確認のため取得しない

写真と自己像――写っている人と、演じた役を分ける

写真なら、本人の素顔がそのまま写るでしょうか?

絵を見る手がかり服装、視線、撮影の角度から、どんな場面を想像するか考えてみます。自分が想像した物語と、作品情報に記された制作方法を分けて読みます。これは絵画ではなく、作者が役を演じて撮影した写真です。

シンディ・シャーマンの《無題のフィルム・スティル #21》は1978年の写真です。Metは、1977〜1980年の連作で、作者自身が服装や姿勢を変え、映画を思わせる角度と照明で役を演じたと説明しています。実際の映画から切り出した一場面ではありません。

写っているのが作者本人でも、個人の性格を直接説明する自画像とは限りません。誰かの役を思わせる服装、視線、撮影の角度を読むと、既存の映像が人物像をどう作るか考えられます。写真の具体的な記録性と、演出された像は、同時に存在できます。

この節の出典・画像の利用条件

The Metropolitan Museum of Art / Untitled Film Still #21 ↗
確認箇所:解説・Artwork details:1978年、1977–80年の連作、本人による演技と映画らしい角度・照明

設置と時間――作品を保つことも、経験に含まれる

作品は、完成した形をずっと変えずに残すだけでしょうか?

絵を見る手がかり二つの時計の針と、よく似た形を見比べてください。次に、ずれたり止まったりしたときの再設定の条件を読み、見る瞬間によって何が変わるか考えます。時計を描いた絵ではなく、実物を設置した作品です。

ゴンザレス=トレスの1991年の《無題(完全な恋人たち)》は、二つの壁時計と壁の塗装からなる作品です。時計は最初同じ時刻に合わせられ、やがてずれたり止まったりします。MoMAは、停止した場合に再設定して同期を戻せることと、パートナーのAIDS診断との関係を説明しています。

日用品の形が単純でも、時間の経過と、保つための行為によって、経験は変わります。題名、素材、展示の条件、作者の記録を合わせて読むと、描かれた物語がない作品にも、具体的な人生との関係を考えられます。時計が見せる時間を、見る人の感想だけへ還元しません。

この章の例を通して、20世紀には「どう描くか」に加え、「何を選ぶか」「どう見せるか」「誰の像か」「どう経験が続くか」が作品の問いになると考えられます。名称を覚えるためだけでなく、作品の具体的な条件を読むために、前の時代の章とも往復してみてください。

この節の出典・画像の利用条件

The Museum of Modern Art / Untitled (Perfect Lovers) ↗
確認箇所:1991年、壁時計と壁の塗装、同期・ずれ・停止・再設定、パートナーのAIDS診断との関係

The Museum of Modern Art / The Red Studio ↗
確認箇所:1911年の作品情報・Gallery label:Issyのアトリエ、絵画・彫刻・陶器、赤い面と輪郭

The Museum of Modern Art / Bicycle Wheel ↗
確認箇所:作品情報・解説:1951年の第三版、失われた1913年の原作、既製品、Dadaと第一次大戦

The Museum of Modern Art / One and Three Chairs ↗
確認箇所:作品情報・MoMA Learning:1965年、椅子・写真・辞書の定義、選択と意味の問い

The Metropolitan Museum of Art / Untitled Film Still #21 ↗
確認箇所:解説・Artwork details:1978年、1977–80年の連作、本人による演技と映画らしい角度・照明

この章で見えてきたこと

  • 20世紀美術は年代の大きな入口で、キュビスムなどの個々の方法を含みます。
  • 抽象にも色、形、素材、空間の異なる問いがあります。
  • 戦後の絵画、日用品、言葉、写真、設置は、並行する複数の仕事として読みます。

《開いた窓》と《赤いアトリエ》で、輪郭と広い色面の関係を比べる。 カンディンスキーとモンドリアンで、色の配置と目の動きを言葉にする。 所蔵館の作品情報で、構想の年、目の前の版の年、素材、展示条件を区別する。

この10図版を選んだ理由

色、線、形、素材、展示方法を実作品から比べる10図版です。既存の掲載可判定、館のCC0、Commons個別ファイルの忠実複製の表示と法域差をそれぞれ確認し、全景を保持しています。転載条件を確認できない作品には、所蔵館の個別作品ページへの入口を置きます。絵画・素描・コラージュ・写真・設置作品の違いと、原作の年・再制作の年を分けて読みます。

この時代を本で読む

前後の時代を見渡す

いちばん親切な 西洋美術史

池上英洋・川口清香・荒井咲紀 著
新星出版社

古代から現代美術、その後の展開までを図版で見渡す入門書。この章で出会った様式を、美術史の大きな流れのなかに置き直す入口として。

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表現の広がりを深く読む

西洋美術の歴史8 20世紀―越境する現代美術

井口壽乃・田中正之・村上博哉 著
中央公論新社

抽象芸術の成立から、戦後の抽象、ミニマリズム、現代生活と美術へ進む通史。絵画の枠を越える、この章の後半をさらに読むために。

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